お知らせ・トピック

2025.06.21論文

季節性ヒトコロナウイルス229Eに存在する、機能が明らかになっていないORF4遺伝子に関する論文が受理されました。

論文タイトル:Changes in ORF4 of HCoV-229E under different culture conditions.

著者:Kitai Y, Kojima S, Aishajiang A, Kawase M, Watanabe O, Yabukami H, Hashimoto R, Akahori Y, Katoh H, Takayama K, Nishimura H, Shirato K, Takeda M.

雑誌:J Gen Virol


ヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)は、人のかぜなどの呼吸器感染症の原因となるウイルスです。このウイルスのゲノムには「ORF4」と呼ばれる機能がまだ分かっていない遺伝子が含まれています。これまでの研究から、このウイルスを一般的な株化細胞で培養していくと、このORF4という遺伝子が途中で切れて短くなることがわかっていました。

今回の研究では、実際に感染症を起こした患者さんから見つかったウイルスには、完全な形(219個のアミノ酸)でORF4が残っていることが確認されました。しかし、そのウイルスを普通の実験用の細胞で育てると、ORF4が途中で切れて、短くなってしまうことが多く、長さもいろいろ(例えば168個や143個、16個)に変わっていました。

ところが、より人の体の中に近い環境である「気管や気道の細胞」を使って育てた場合には、ORF4は切れずに元の完全な形のまま、長期間安定して保たれました。

この結果から、ORF4は人の体の中では大切な役割を果たしている可能性が高く、ウイルスの本来の性質を調べるには、より自然に近い方法で培養することが重要だとわかりました。