お知らせ・トピック

2025.11.08学会

第57回日本小児感染症学会でM4学生の小西さんがポスター発表されます。

第57回日本小児感染症学会

https://jspid57.umin.jp/index.html

会期 2025年11月8日(土曜日)・11月9日(日曜日)

会場 グランドニッコー東京ベイ舞浜


P-9 

麻疹ウイルスの抗原性安定性の分子基盤の解明

小西白峰1、兵藤歩1、田代楓2、關文緒3、瀬川太雄4、伊藤琢也4、北井優貴1、赤堀ゆきこ1、加藤大志1、竹田誠1

 

1東京大学・医学部・微生物学

2東京科学大学・大学院医歯学総合研究科

3国立健康危機管理研究機構・国立感染症研究所

4日本大学・生物資源学部・獣医学科

 

【目的】麻疹ウイルスは単一血清型であり、少なくとも半世紀以上にわたり抗原性の変化を示していない。本研究では、麻疹ウイルスの抗原性安定性の分子的基盤の解明を目的とした。
【方法】1.麻疹ウイルスを含む各種モルビリウイルス(イヌジステンパーウイルス、鯨類モルビリウイルス、アザラシジステンパーウイルスなど)の抗原交差性を、それぞれの感染動物由来血清(ヒト、イヌ、イルカ)を用いて評価した。2.各種モルビリウイルスのSLAM受容体利用能の動物種特異性を評価した。3.ウイルス工学および光遺伝学的手法を用いて、麻疹ウイルスに対する新たな生物学的封じ込め系を構築し、この系を用いてヒト血清中の中和抗体からのウイルス逃避能を検討した。
【成績】1.麻疹ウイルス流行株とワクチン株との間に顕著な抗原性の差異は認められなかった。一方で、異なるモルビリウイルス間では抗原交差性が1/10以下と著しく低かった。2.麻疹ウイルスおよび各種動物モルビリウイルスは多様な動物種由来のSLAMを受容体として利用可能であった。3.中和血清存在下で繰り返し逃避実験を行ったが、麻疹ウイルスが逃避変異を獲得することはなかった。
【結論】モルビリウイルス間で抗原交差性が低いことは、これらのウイルスが抗原変異を許容しうる潜在的能力を有していることを示している。一方、麻疹ウイルスがイヌやイルカなど他種動物のSLAMを利用できるにもかかわらず、抗原性がモルビリウイルス間で大きく異なることは、SLAM結合部位の保存性が抗原性の安定性に大きくは寄与していないことを示唆している。おそらくは麻疹ウイルスが逃避変異を獲得しにくいのは、変異能力を超える多数のアミノ酸置換が同時に必要であるためと考えられる。